Knock our Heart -nockのひねくれブログ-

自分の価値観を表現する場所 

呑み屋で語る桃太郎 (ノリだけで書きました)

まあこれは婆さんから聞いた話なんだけどな?俺、実は桃から生まれたらしいんだよ。

なんか婆さんがでっかい桃を拾ってきてな?その桃を一刀両断したら中から俺が出てきたっつーんだよ。初めてそれ聞いたときは「マジか!?」って思ったよね。「俺ってそんなジューシーなところから生まれたのかよ!?」みたいな。

ってかさ、桃から生まれたから俺の名前桃太郎っていうんだぜ?いくらなんでも安直すぎると思わないか?桃要素を入れるにしてももうちょっとひねってほしいよな。松坂桃李みたいにさ。こんなキラキラネーム嫌だぜ。

 

おっと話が逸れちまったな。なんだっけ?そうそう、桃から生まれたってところだったな。

俺が生まれてからは爺さん婆さんはそりゃもう手厚く育ててくれたさ。婆さんの作る飯は美味いし、爺さんはやんちゃな俺の相手をいつもしてくれたし。

そうこうしているうちに自慢じゃないが俺は近所で敵なしの猛者になったんだ。腕相撲でも喧嘩でもモンハンでも俺の右に出る者はいなかった。

 

俺は飢えていた。強い相手に。この町のやつらなんて片手一本あればことが足りる。なんだか刺激が足りない日々が続いていたんだ。

そんなときに「鬼ヶ島」ってところに弱い奴らから金銀財宝を奪い、男は労働力として扱き使い、女は嬲りつくす頗る悪い「鬼」ってやつがいるってのを聞いたんだよ。

「こいつらなら俺の持て余した力が役に立つんじゃないか」そう思った俺は自らその鬼を退治することを決意したのさ。

ってか話また逸れるけど鬼がいるから鬼ヶ島ってのもまた安直だよな。センスがねえよ、センスが。

 

そんなわけでこのことを爺さん婆さんに伝えると快く送り出してくれたよ。俺が死ぬとも限らないが俺を信じてくれたんだ。良い人たちだよホントに。婆さんは手作りの黍団子を作って俺に持たせてくれた。あれは温かかったな。二重の意味で。

 

早速黍団子を腰につけ鬼ヶ島へ向かったんだが、なんか知らんけど動物どもがひょいひょい集まってくるんだよ。イヌにサルにキジだ。どいつも「黍団子を一つくれたらお供します」といって黍団子をもらいたがる。

「なんで俺イヌと会話しているんだ?」なんて思ったけどまあそれは良いだろう。問題は「お供します」だ。

そんなに俺は一人で歩くのが寂しそうに見えたのか。「ぼっちが可哀想だから一緒に居てあげるよ」的なノリだろ、完全に。だってそうだろ?普通見ず知らずの奴に「お供します」なんて言わねえよ。

まああまりにもうるさいから仕方なく黍団子を上げて仲間ってことにしたんだけどな。偉いだろ、俺?

まああいつら鬼ヶ島に行くって分かったとたん「やっちまったな」的な顔してたけどさ。それは俺は悪くないからな。勝手についてきたあいつらが悪いんだからな。そうだよな?

 

そうこうしているうちに鬼ヶ島についたんだ。早速俺は鬼とやらに戦いを挑んだ。図体でかくていかにも強そうな輩ばかりだったから骨が折れると思った。こいつらなら俺とやりあえるかもしれないと久々に昂奮した。

だが結果はどうだ。何十人かいた鬼を全員デコピン一発で倒しちまった。1分で終わった。

もうイヌもサルもキジも口あんぐりさ。囚われていた男女はみな俺を見て怖がるを通り越してドン引きだよ。俺はお前らを救いに来たってのに、手を差し伸べようとしたらみんな一目散に逃げてったよ。

家来もみんな目の色変えて侮蔑と恐怖の入り混じった瞳でこちらを見ながら去って行ったよ。

 

そこで俺は気付いちまった。俺は決して正義の味方なんかじゃないって。ただ自分の力を誇示したかっただけのヤンキーと一緒なんだって。本当の鬼は俺なんだって。気付いちまった。

爺さん婆さんが送り出してくれたのも、本当は俺に負けてほしかったのかもしれない。負けることで自分がいかに驕っていたかを気付かせたたかったのかもしれない。

だが、俺は別の形でそれに気付いちまった。勝ってすべてを失った後だ。俺には強大すぎる力しか残っていなかった。俺はもう戻れなかった。

 

今思えばイヌたちが俺がぼっちだって思って近づいたことは間違いじゃなかった。必死に俺の孤独を埋めようとしてくれていたんだ。なのに俺はその優しさを踏みにじった。踏みにじってすべて俺だけで終わらせてしまった。最低だ。

 

分かるか?強い奴は正義だが強すぎる奴は恐怖なんだよ。

俺はあれからずっと一人で生きてきた。誰もが俺の力に恐れ戦くんだ。

俺は思うんだ。弱い奴は誰かに縋って生きることができる。だが強い奴は縋れるやつが少ない。だから、人は弱くある方が得なんだ。弱い奴の強みがそこさ。

お前もいずれ知るだろう。上を目指すのはいいが、頂上にたどり着いてしまえばそこには下しかいない。強者ってのは孤独なのさ。

 

ちと長話しすぎたな。付き合ってくれてありがとな。

またお前の亀を助けたときの話、聞かせてくれよ。

じゃあな。また。